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これって病気?⑤統合失調症

コロナ禍で外出制限が続き、人にも場所にも思うように行き来出来ない日々が続いています。そんな中、ココロの持ちようにも微妙にストレスがかかり、あれっ?こんな筈じゃゃなかったのに、など自分らしさが失われてしまい、どうにも思うように振舞えない、とか行動できない、と感じていらっしゃる方々も多いことかと思います。こうしたストレスが溜まってくると、時には心のアンバランスが精神症状としてあらわれてくる場合もあります。今日はそんな風に日々のストレスや他の要因から心のバランスを崩してしまった人たちの症状の一つ、統合失調症についてお話しします。

目次

原因

統合失調症・・・聞きなれないという方、いや最近よく耳にするよ、という方、いろいろでしょう。この症状に至る原因は、医学界でもまだはっきりとは特定されておりませんが、脳の機能の障害と言われています。脳内の神経伝達物質(脳内ホルモン)のバランスの乱れからくるとも言われ、比較的ストレスに弱い人に起こりやすい、とも言われております。
また、この症例についての幅は広く、ひとそれぞれに程度も異なっています。ですが現実の生活に不具合を感じ、何らかの支援が必要になる、という点では一致しています。この症状に至った人は、まず間違いなく医者の助けが必要となるでしょう。幸い、こうした症状によく効く薬が数多くありますし、薬には副作用がつきものですが、それに対する薬も各種用意されています。症状を疑われる方は、まずとにかく精神科を受診してください。症状には大なり小なり個人差があり、似通っているようでまた微妙にっ違ってもいますので、ひとつひとつ箇条書きにして解説しましょう。

症状

頭の引き出し

幻聴

思考化声:自分の考えていることが、外部からの声として聞こえます。また、絶えず自分を批判する声がします。具体的には『バカ』『ブス』『死ね』など。また『自意識過剰』『お前が悪い』『嫌な性格』などという例もあります。

対話形式の声:二人以上の他人が自分のことで噂し合っている声が聞こえます。

幻視

ありえないものが見えたりします。気になっている人が目の前に現れたり、逆に嫌いなものや人が見えたりもします。周囲の人が自分のことを噂し合っている光景などが見えたりします。

自我障害

能動意識の障害:自分の考えが自分のものである、と考えられない場合があります。

思考の注入:他人の考えが吹き込まれている感覚があります。

思考干渉:他人の考えに干渉されている、という感覚があります。

作為体験:被影響体験とも言われ、他人の意思で自分が動かされ、操られている意識があります。例えば自分の身体に電波がかけられて操られている感覚で、テレビの中の人が個人的に自分を攻撃したり、目線を送ったりしている意識があります。

被注察体験:自分は絶えず盗聴されているか、監視カメラで見張られている、またはのぞかれている感覚があります。

離人症:自分が存在するという感覚が薄れます。絶えずふわふわしている感じです。

自我の単一性の障害:自分は一人であり、二人はいない、という感覚が障害されます。

自我の同一性の障害:自分は周囲とは区別され、過去・未来へと続く連続する固有の一人である、という感覚が障害されます。

思考の障害

思考奪取:自分の考えが抜き取られている感覚です。『医者はどうして症状を尋ねるのだろう、自明のことなのに』という具合です。

思考伝播:自分の考えが周りの人に筒抜けになっている、という感覚です。例えば『今ここで一言でも発すれば自分のすべての考えが知られてしまうから、ぐっとこらえて黙っていよう』などとも考えます。

支離滅裂:考えに論理的な結びつきがありません。

言葉のサラダ:無意味な言葉を羅列していきます。

思考途絶:突然、考えていることが止まります。

妄想

被害妄想

妄想気分:ただなんとなく不気味な感覚にとらわれます。

妄想知覚:実際の知覚に対して論理的・感情的に了解できない意味付けがなされます。例えば『ここに壊れた時計が置かれているのは地球滅亡のサインだ』とか『あのテレビ番組の背景のオブジェは世界崩壊の危機を暗示している』『私のこうした知覚のすべてはあの電柱のありようを予兆として始まった』などなど。

妄想着想:突然頭に浮かんだことをそのまま信じてとらわれてしまいます。

関係妄想:周囲のすべての事象が自分と深くかかわっている、という自覚です。

陰性症状と認知機能障害

これらの顕著な症状は陽性症状と呼ばれますが、逆に目立った症状は無くとも、感情がどんどん鈍化してゆき、何にも反応しなくなる(平板化)とか、考える気力が失せて(意欲低下)考える能力それ自体が低下してゆく、といった症状で引きこもりなどを誘発していきます。

また、認知機能の障害が現れる方もいます。記憶力が低下したり、集中力が落ちたり、どれかこれかの優先順位がつけられないで目の前の作業が進まなくなる、という状況に悩まされます。

周期

前兆期、急性期、休息期(消耗期)、回復期、と分けられます。

前兆期:特に目立った症状はありませんが、イライラがつのったり、焦りが生じ、集中力が低下したり、音に敏感になり、よく眠れない日が続きます。周囲からは気づかれにくいため、病気の予測もたちにくいです。ただこの時期、過労には気をつけた方がいいでしょう。

急性期:幻聴や妄想に襲われて混乱し、考えがまとまりません。周りに敏感になって周囲とのコミュニケーションがうまくとれなくなったりもします。不安や緊張も続きます。こうなるとまず休息が必要です。良く睡眠をとって薬を飲み、生活全般で安心感を得ることが大切です。

休息期(消耗期):いわゆる陽性症状は少なくなりますが、眠気が強く体がだるくなり、意欲や自信が持てない日が続きます。焦らず無理をしないで、長い目で見て治療に専念することが重要でしょう。

回復期:こころと身体にゆとりが生まれ、安定的になります。周囲への関心も回復してきます。楽しみながらのリハビリテーションが有効とされ、カウンセリングや再発予防へ向けての服薬もより重要度を増します。

周囲と対応

一般にこうした統合失調症の症状をお持ちの方は、感情の変化が激しかったり、気まぐれで行動が予測しにくい、ということがあります。自分の耳に聞こえてくる幻聴や、五感に訴えてくる妄想と付き合わなければならないために、話題を次々と変えたり、脈絡のない行動をとることが多いからです。自己満足的で自己陶酔感の強い人もいます。宗教や哲学、語学など、特定のテーマに固執してり没頭したりし、周囲からは何を考えているのかわからない、と受け取られることもしばしばです。

かと思うと突然おかしくもないのに笑ったり、しかめっ面をっしたり、大声を出すかと思うと些細なことが気になったり、また食べることに興味を失ったり、突然暴力的になったりするひともいます。なかにはカタレプシーといって特定の姿勢で硬直したようになる人もいます。

かつては統合失調症は、精神分裂病ともいわれていました。非常に重篤な病気です。ただ最近では、支援者たちの協力を得ながら、こうした症状を隠すのではなく、患者さん本人の個性としてどんどん表現しよう、という流れも出てきました。こうした症状に見舞われた方々を日常のふとした瞬間、例えば電車の中とか、道端で見かけることも多くなってきているのではないでしょうか。そうした場合、怖がらず、優しい目線で接してあげることも大切な時代となって来ているように思います。

生涯有病率

0.3~0.7%とも言われ、1000人いればその中の3人から7人には症状がある、と言われます。決して珍しい病気とは言えないのが現状です。

治療

診察室

主流は薬物です。一部ではダイアログカウンセリングという方法も存在し、薬に頼らない対話による治療法というのも開発されてきてはおりますが、未だ開発途中、といったところでしょうか。
薬には抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗認知症薬など、各症状に合わせて医者が処方します。大体においてよく効き、症状を抑えます。
ただ薬ですから副作用の強いものもあり、そのために二次的な症状と闘っている方も少なくありません。

たとえば開発順に第一世代と呼ばれる定型抗精神病薬から引き起こされる副作用にはアカシジアやジストニアがあります。これらはじっと座っていられない、などから始まって首が曲がる、声が出ない、身体が傾く、字が書きにくい(書痙)、震える、などといった症状が現れます。またプロラクチノーマになると月経異常や射精不能、不妊症や骨粗しょう症などにもなるといわれます。遅発性ジスキネジアでは非自発性運動障害といって、顔やあご、腕、足などが無意識的・反射的に動いてしまう、といったことがあります。特に悪性症候群と呼ばれる部類では、高熱や振戦(手足の震え)、意識障害もあり、ひどい時には多臓器不全、循環器虚脱という症状に至る場合もあります。

第二世代とよばれる非定形抗精神病薬は陽性症状だけでなく、陰性症状や認知機能障害にもよ効くといわれます。副作用である無顆粒球症を発症すると、発熱やのどの痛み、倦怠感が起こり、細菌に感染しやすくなったり、肺炎などの重感染症を起こしやすくなります。

第三世代と呼ばれる抗精神病薬は、副作用として一般的な、のどの渇きや便秘、倦怠感などを別にすれば、比較的副作用が少ないです。医者も睡眠薬や便秘薬などといった副作用止めの薬と併用することで対応しています。現在はこうした治療薬が主流といわれますが、こうした薬も患者さんの感想や聞き取りを参考にしながら、種類や量を調節しながら治療がすすめられています。

これら統合失調症の治療薬の数々は、近代の精神科治療における画期的発明ともいわれてきた歴史があり、欧米をはじめとして世界的にも長くこの薬物治療が行われてきました。ただ最近は精神科リハビリテーションといわれる方法と組み合わせて行われる例も多くなってきています。

それはたとえばデイケアであったり、作業療法と呼ばれる軽作業であったり、SST(Social Skills Traininng)と呼ばれる生活機能訓練などに代表されます。また自分の病気がどのような性質のものか、といったことなどを解説してゆく心理教育などを通しても、患者さんを薬と社会生活の両面からケアしてゆく方法がとられています。これらは各医療機関や地域の精神保健福祉センター、また自立訓練所などでもおこなわれています。医師、看護士、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士、カウンセラーなど、専門のスタッフが治療にあたっていますので、自分に合った治療方法を相談されると良いでしょう。

統合失調症では、まず患者さん本人の社会性が著しく障害される場合が多いため、これらの精神科リハビリテーションやその一環としてのリクリエーションなどを通して、中には料理や音楽なども取り入れながら、患者さんが直面している「生きづらさ」を改善し、対人関係能力を高めてゆく試みが行われています。

再発

再発率は高いです。いったん症状が和らいでも、またいつ症状が戻ってこないとは完全に言い切れないことが多いからです。
再発すると、一旦できるようになっていたことなどが出来にくくなったり、薬が効きにくくなる、といったことがあります。こうしたことを踏まえて、治療の意味だけでなく、再発予防のためにも、服薬やリハビリを怠らないことが大切です。手前勝手な判断で服薬を辞めてしまったり、医者や支援者の声に耳を塞いでしまったりしては元も子もありません。症状が落ち着いても、長期にわたってこうした治療を続けることが再発防止につながります。根気よく治療を続けて行くことが何にも増して重要です。

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