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これって病気?③パニック障害(パニック症)

突然、理由もなく強い不安に襲われて、動悸や発汗、息苦しさや手足のしびれ、或いはめまいや吐き気、ふらつき、悪寒、腹痛、下痢などにも見舞われるというまさにパニックのような発作(パニック発作)を経験したら、そしてそのような発作が再び起こるのではないかという不安(予期不安)に悩まされ、発作が起こりそうな場所や状況を回避する(広場恐怖)、そんな状況を繰り返し経験されている方は、パニック障害(パニック症)を疑ってみてください。

目次

パニック障害(パニック症)とは

症状

パニック障害(パニック症)の定義としては、突然、前触れもなく動悸やめまい、発汗や吐き気などを催し、窒息感や手足のしびれなどを感じる発作を起こし、そのために生活に支障が起きている状態、ということが出来ますが、実は状況はとても深刻な他の症状をも含んでいます。

というのも、こうしたパニック発作は、本人にとって死にそうなほど辛い苦痛を伴ったりもするのですが、実際に10分ほどで昇りつめた激しい発作は、その後、場所を移したり状況が変わるなどすると収まりをみせ、長くとも一時間ほどすると嘘のように跡形もなく消失します。
理由もなく起こるこうした発作に、一時は心筋梗塞などの重篤な心臓疾患や呼吸器系の病気を疑いたくなるものですが、救急車で搬送されるなどした後も、どこを調べても、内科系の検査では、身体のどこにも異常は認められないのです。なので、家族や友人などが最初は心配してくれますが、こうした身体に異常のない発作が繰り返し起こることで、「またか」といった顔をされたり、「大げさなんじゃないか?」などというように思われたりする、いわば『オオカミ少年』状態となって、孤独や不安を強めてしまう状況となるのです。

また、こうしたパニック発作が繰り返し起こることで「また起こるのではないか」「次はもっと激しい発作になるのでは?」とか、「今度こそ死んでしまうのではないか?」「次に発作が起こったら、気がおかしくなるのではないか?」などといった、いわば過度な不安を常に抱えるようにもなるのです。

そして次に発作が起こった時、「そこから逃げられないのではないか?」「助けが得られないのでは?」「今度こそ恥を書くのではないか?」などと感じて苦手な場所が出来てしまい、広場に限らず、ひとりでの外出や、電車に乗る、とか美容院や歯医者に行く、といった状況をもさけるようになり、これが高じて、仕事や日常生活が困難となってひきこもりがちになったり、人間関係に影響を及ぼし、うつ状態を引き起こしたりしてしまうのです。

実際に心臓や内臓に異常が見つかった場合には、それ相応の治療の道が開かれるわけですが、身体に異常の見つからない、パニック障害(パニック症)の場合には、できるだけ早期に、心療内科や精神科、(精神)神経科などの専門の診療科を受診されることをお勧めします。




対処法

頭を抱える人

こうした発作や症状を経験された方でしたら、まず発作を起こしてから2~3か月以内に、早期治療を始めることをお勧めします。予期不安が溜まりに溜まってしまったりすると非常に厄介ですし、広場恐怖の症状なども、さほど強くならないうちに治療を始めると、回復を得やすいということが分かっています。



無理をせず、まずは急激な症状を抑えるお薬による治療を受けながら、それと並行しながら少しづつ不安をコントロールしたり、様々現れてくる苦手なことなどに慣れるようにする心理療法(セラピー、カウンセリング)などを用いながら、だんだんと回復に取り組んでいくことが必要です。その際は、患者様ご自身も、周囲の方々も、ゆっくりと見守る心構えが肝要となります。


原因

事故現場

パニックは、死への危険を察知して警告を発する、いわば生き延びるための必要な反応ということが出来ます。災害や不慮の事故など、命の危険に遭遇した時、人は脈が速くなったり、汗をかいたり、血の気が引いて手足が震えたり、大声で叫んで逃げ出したくなったりといった反応を示します。これは本来人間に備わっている至極当然のメカニズムです。パニック障害(パニック症)の人は、それが何でもない時に起こってしまう、いわば誤作動の状態ということが出来ます。


このパニック症状が起きる原因は詳しくは明らかになっていませんが、環境とか心理的要因のほかにも原因はあるといわれ、1980年に米国精神医学会で初めて独立した病気として扱われました。いわゆるストレス性の神経症とは全く別の病気とされて、日本でもここ10年ほどの間に『パニック障害(パニック症)』の名前とともによく知られるようになってきました。かつては心臓神経症とか、過呼吸症候群とか言われていたものです。


様々な調査の結果、脳内神経物質(脳内ホルモン)のバランスの乱れである、ということが分かって来ていて、不安や恐怖を引き起こし血圧や拍数をあげるノルアドレナリンが大きく関与しているともいわれています。


現在、100人に1~2人くらいとも、3人くらいいるともいわれていて、青年期から成人期前半に発症しやすく、男性よりも女性に多く見られ、女性は男性の2~3倍ほどもいるといわれています。先にも述べたような理由から、発作を経験したら、とにかく早期に受診されて治療にあたることが回復への近道です。そこでは強い発作時の症状を緩和するためのお薬を処方してくれますし、必要な生活指導を受けることが出来るでしょう。

診断と治療

聴診器とハート

まず医師が問診をし、似た症状を起こす他の身体的・精神的疾患が無いことを確認します。そして発作が起きた時の状況や発作時の症状、再発への不安の度合いや発作の原因となりうる状況を回避するための行動などが起こっているか、それらが一か月以上にわたって起こっているか、などから判断します。そして身体的・精神的疾患による症状なのかを否定するための検査を行うこともありますが、特にべつの問題が疑われない場合は、それ以上の検査は行いません。そして投薬を行います。

投薬

脳内神経物質のひとつで、快感や安心をつかさどるセロトニンに効果的に作用するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が、抗うつ剤としても副作用が少ないので、実用的に多く使われています。これに抗不安薬の一つであるベンゾジアゼピン系薬剤を併用したりしますが、ベンゾジアゼピン系は短期間の使用にとどめることが望ましく、お医者様と患者様の間で丁寧な問診を繰り返し、薬の効果などを確認しながら増減したり、薬を変えたりします。そして一方では心理療法的アプローチを用いて徐々に薬からの卒業を目指していきます。

以下に実際の心理療法で使われる手法の一部をご紹介します。

心理教育・認知療法

パニック発作は、経験した人の実感では、死にそうになるほどのつらい体験でもあるわけですが、実際には、決してパニック発作で死ぬようなことにはならないのが現実です。このことを患者様ご自身がしっかりと認識をし、繰り返し思い出してゆくことで誤った認識を変えてゆく、という治療がなされます。

そして適切な治療さえ行っていけば、治る病気である、という認識も、大切なポイントです。

起こり始めに歯止めを

パニック発作に陥る前の、軽い症状がみられた時、冷静に対処することが必要です。その際、精神療法でよく使われる”呼吸法”を試してみることが有効です。落ち着いて数を数えながら深呼吸をしてみることが、非常に有効な方法ともとされています。

嗅覚・味覚

嗅覚は、自律神経の中枢といわれる間脳の視床下部を通さずにダイレクトに脳に直結する唯一の五感ともいわれます。この点を利用して、パニックが起こりそうなときに使ったりするのが有効なようです。自分に合った匂いの元やアロマの瓶などを携行したり、メントール系のすっきりとする味覚のガムや飴などを素早く口に含むのもいいでしょう。その他、冷たい水や、温かい飲み物など、温度変化を感じられそうな飲み物を飲むことも効果があるといわれます。つまり、発作が起こりそうなとき、落ち着いて発作を迎え撃ち、自らその状態をコントロールしてゆくことで、安心感を誘い、パニックの抑止へとつなげてゆきます。

行動療法

暴露療法ともいわれます。例えば電車に乗れないで困っている人などの場合、まず駅まで行って帰ってくる、次に電車を見るところまで行ってみる、そしてその次にはひと駅だけ電車に乗って帰ってくる、などの手順で少しづつ無理の無いように、パニック障害(パニック症)のひとにとっては難しくなった様々な課題を克服してゆく方法です。お医者様の指導を仰げる場合もありますし、カウンセラーについて丁寧に指導を受けるのも良いでしょう。

その際、お医者様なりカウンセラーなりを、信頼してついてゆくことが大事な前提となってきます。よくドクターシッピングなどといってお医者様やカウンセラーを信用せずに手当たり次第に探して回ったり、目の前の指導に当たる方々の言うことを注意して聞かずに上の空にしていたり、他人事のように聞き流してしまったりしていては、治るものも治らない、ということになりかねません。

生活習慣

猫と読書

セルフケア、またはセルフメデュケーションという考え方が重要です。規則正しい生活を送り、十分な睡眠やストレス解消に努め、自律神経をはじめとして心身を安定させる事が予防策として有効です。よくコップの水にたとえられますが、ストレスをコップに一杯になるまでため込んでいては、心身の健康はおのずから遠くなります。必要に応じて日々、解き放ってゆく営みが大切でしょう。

飲酒や喫煙、カフェインの摂取などは、薬の副作用を誘発する可能性が在るので危険です。その他、
低血糖や疲労、蛍光灯や熱気、湿気なども遠ざける配慮が必要です。

そして適度な運動を心がけることなどは、脳内快感物質であるエンドルフィン分泌を促し、神経細胞の新生に関わるBDNF(脳内栄養因子)の生産をも促すといわれ、うつやうつ状態の改善に大いに役立つといわれています。

大事な事

患者様それぞれが苦しんでいるという事実、を周囲も理解し、それぞれがココロをゆったりと持って、長い目でゆっくりと取り組んでゆく姿勢が何より大切なことでしょう。

一進一退もあるでしょう。引きこもりたくなる気持ちも横に置きながら、絶望せず、自分を責めず、まずは治る病気だということを念頭に置き、それぞれのペースで無理なく取り組んでいっていただきたいと思います。

医療やカウンセリングなど、得られる助けであればそれを受けることに躊躇せず、セルフケア、セルフメデュケーションという観点も頭に置いて、どの症状も今は過渡期にあるだけなんだ、というどこか開き直った気持ちでこころをやすらかに保ち、元の自分に帰れる日をイメージしていってください。

長く見えるトンネルも、明日にはすこしづつ明るく開かれて来るかもしれません。自分を信じ、周囲を信じ、回復を信じて日々、小さな努力を積み重ねていくことが、何よりも回復への一歩となるでしょう。

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